CS立体図の例。白黒の陰影に、尾根の赤と谷の青が重なり、河岸段丘や斜面の微地形が判読できる
hoshitori GEOで生成したCS立体図の例(色合い: 白黒+赤青)

CS立体図と赤色立体地図の違い微地形判読に使う地形表現をどう選ぶか

地すべり地形や崩壊跡などの判読に使われる代表的な地形表現として、「CS立体図」と「赤色立体地図」があります。

どちらもDEM(数値標高モデル)から複数の地形量を計算し、地形の凹凸を1枚の画像で直感的に把握しやすくしたものです。ただし、使用する地形量や配色、作成方法、データの入手方法には違いがあります。

この記事では、両者の仕組みと特徴を整理し、実務でどのように使い分ければよいかを解説します。

共通の背景:陰影起伏図だけでは見えにくい地形がある

従来から使われている陰影起伏図は、特定の方向から地表面に光を当てたと仮定し、明暗によって地形の凹凸を表現するものです。

地形を直感的に把握しやすい一方、光源の方向によって見え方が変わります。光の方向と平行に延びる尾根や谷が目立ちにくくなったり、暗部に入った地形を判読しにくくなったりする場合があります。国土地理院の陰影起伏図では、北西方向から光を当てた表現が採用されています。

CS立体図と赤色立体地図は、どちらも固定された一方向の光源を使わず、DEMから計算した地形量を色や明暗に割り当てます。そのため、陰影起伏図に比べて、光源方向による見え方の偏りを避けやすいことが共通の特長です。

ただし、どちらの図法も、使用するDEMの解像度や計算範囲、パラメーターの設定によって見え方が変わります。図を表示するだけでなく、元データや作成条件も確認することが重要です。

赤色立体地図とは

赤色立体地図(Red Relief Image Map/RRIM)は、アジア航測株式会社の千葉達朗氏が2002年に開発した地形表現手法です。

航空レーザ測量によって得られる大量の標高データを、等高線だけに変換するのではなく、面として分かりやすく可視化するために考案されました。

赤色立体地図では、DEMから次の地形量を計算します。

  • 傾斜量:地表面の傾き
  • 地上開度:主に尾根などの凸地形を表す指標
  • 地下開度:主に谷などの凹地形を表す指標
  • 尾根谷度:地上開度と地下開度から求める、尾根と谷の性質を示す指標

傾斜量を赤色の彩度に、尾根谷度を明度に割り当てることで、急斜面ほど赤く、尾根は明るく、谷は暗く表現されます。固定した光源を使用しないため、地図を回転させても地形の見え方が変わりにくく、微地形と広域的な地形を同じ画像から把握しやすいことが特長です。

火山地形、地すべり地形、断層地形の把握をはじめ、遺跡や古墳、山城跡の調査など、幅広い分野で利用されています。

赤色立体地図の特許と利用条件

赤色立体地図の作成技術や提供データには、関連する特許や利用条件があります。

初期の主要特許である特許第3670274号は、2023年11月5日に存続期間を満了しています。一方、アジア航測の公式サイトでは、現在も関連特許を使用した作成技術や、教育・研究目的での実施条件、提供データの利用条件が案内されています。

個人での利用や授業など、一定の教育活動については、アジア航測への報告を必要としない条件が示されています。ただし、論文、講演、書籍、ウェブサイトなどで外部に発表する場合や、営利目的で作成・利用する場合は、最新の条件を確認する必要があります。

また、全国版の赤色立体地図は、国土地理院の「地理院地図」で閲覧できます。

CS立体図とは

CS立体図は、長野県林業総合センターの戸田堅一郎氏が開発した地形表現手法です。

名称の「C」は曲率(Curvature)、「S」は傾斜(Slope)に由来します。

DEMから作成した次の3つの地形量をそれぞれ着色し、透過させて重ね合わせることで作成します。

  • 標高:地表面の高さ
  • 傾斜:地表面の傾き
  • 曲率:尾根や谷など、地表面の凹凸
CS立体図の原理を示す模式図。標高を緑から茶、傾斜を白から黒、曲率を谷が青、尾根が赤になるように着色し、3つの地形量を透過させて重ね合わせることでCS立体図を作成する仕組みを示している。
標高・傾斜・曲率をそれぞれ着色し、透過させて重ね合わせることでCS立体図を作成する。

一般的な配色では、標高を緑から茶色、傾斜を白から黒、谷などの凹地形を青、尾根などの凸地形を赤で表現します。

CS立体図の例。白黒の陰影に、尾根の赤と谷の青が重なり、河岸段丘や斜面の微地形が判読できる
hoshitori GEOで生成したCS立体図の例(色合い: 白黒+赤青)

標高、傾斜、曲率を1枚にまとめることで、0次谷、湧水に関連する地形、表層崩壊跡、地すべり地形、土石流地形などを判読しやすくしています。長野県林業総合センターでは、森林路網計画における崩壊危険地の把握を目的として開発・改良が進められてきました。

CS立体図は作成方法が公開されており、QGIS用のプラグインなどを使って、任意のDEMから作成できます。

また、長野県、静岡県、岐阜県などは、それぞれの地域のCS立体図をオープンデータとして公開しています。データごとに利用条件が異なるため、使用する際は各配布元のライセンスを確認してください。

CS立体図の詳しい原理と作り方は、別記事「CS立体図とは?作り方をやさしく解説」で紹介しています。

2つの手法の比較

項目CS立体図赤色立体地図
開発者戸田堅一郎氏(長野県林業総合センター)千葉達朗氏(アジア航測株式会社)
主に使用する地形量標高・傾斜・曲率傾斜量・尾根谷度
基本的な配色標高、傾斜、尾根、谷を複数の色で表現赤色の彩度と明度で表現
地形の見え方谷が青、尾根が赤など、凹凸の種類を色で区別しやすい急斜面ほど赤く、尾根は明るく、谷は暗く見える
光源方向への依存固定した光源を使用しない固定した光源を使用しない
主な入手方法自治体などのオープンデータ、または自分で作成地理院地図、アジア航測の提供データ、自治体などの公開データ
任意の範囲での作成公開されている手法やプラグインで作成可能関連特許や利用目的など、最新の条件を確認する必要がある
色の特徴青、赤、緑、茶、白黒など、多色で表現赤を中心とした単一系統の色で表現

両者とも、固定した光源の向きに左右されにくく、微地形の判読に適した表現です。ただし、原理や配色が異なるため、同じDEMを使用しても地形の見え方は異なります。

CS立体図は、尾根と谷を赤・青で区別しやすいことが特長です。一方、赤色立体地図は、赤色の彩度と明度によって地形全体を連続的に捉えやすい表現になっています。

判読者が慣れている図法や、確認したい地形の種類、対象地域でのデータの入手しやすさに応じて選ぶのが現実的です。両方を見比べることで、片方の図だけでは気づきにくい地形を確認できる場合もあります。

実務での選び方

全国の地形を手早く閲覧したい

全国の地形をすぐに確認したい場合は、地理院地図で公開されている赤色立体地図が便利です。

ソフトのインストールやデータのダウンロードを行わず、ウェブブラウザから全国を閲覧できます。

自治体が公開している高解像度データを使いたい

対象地域の自治体がCS立体図や赤色立体地図を公開している場合は、まず公開データを確認するのが効率的です。

航空レーザ測量などの高解像度DEMから作成された図は、全国版の低解像度データよりも細かな地形を判読できることがあります。

ただし、作成年月、使用したDEMの解像度、対象範囲、利用条件はデータによって異なります。

任意の範囲や手持ちのDEMから作成したい

自分で用意したDEMを使用し、平滑化の強さや色合いなどを調整したい場合は、作成方法が公開されているCS立体図が候補になります。

QGIS用のプラグインを利用する方法のほか、hoshitori GEOを使い、地図上で範囲を指定して国土地理院の5m・10mメッシュDEMからCS立体図を作成する方法もあります。

判読の確度を高めたい

重要な判断を行う場合は、一つの地形表現だけに頼らず、次の資料を組み合わせて確認することが大切です。

  • CS立体図
  • 赤色立体地図
  • 陰影起伏図
  • 等高線図
  • 航空写真
  • 地質図
  • 過去の災害記録
  • 現地調査の結果

CS立体図や赤色立体地図は、地形を判読するための補助資料です。画像だけから、地すべりや崩壊の危険性を確定できるものではありません。

※各手法の作成条件、提供データ、特許、ライセンスなどは変更される場合があります。利用前に、各提供元の最新情報をご確認ください。

よくある質問

CS立体図と赤色立体地図は、どちらが優れていますか?

一律に優劣を決められるものではありません。

どちらも微地形を判読しやすくする手法ですが、使用する地形量と配色が異なります。そのため、同じ場所でも強調される地形や、判読者が受ける印象は異なります。

目的、対象とする地形、DEMの解像度、データの入手方法、利用条件などを踏まえて選ぶことが重要です。判断に迷う場合は、両方の図を見比べる方法が有効です。

赤色立体地図を自分で作ることはできますか?

赤色立体地図に関する初期の特許第3670274号は、2023年11月5日に存続期間を満了しています。

ただし、赤色立体地図にはほかの関連特許や、名称、提供データ、作成サービスなどに関する利用条件があります。すべての用途について「自由に作成・利用できる」とは一律に判断できません。

個人利用、教育・研究、論文やウェブサイトへの掲載、営利目的の利用では条件が異なる可能性があるため、作成や公開を予定している場合は、アジア航測の公式サイトで最新の条件を確認してください。

閲覧だけであれば、地理院地図で全国版の赤色立体地図を確認できます。

どちらも同じDEMから作成できますか?

基本的には、どちらも格子状の標高データであるDEMをもとに作成します。

ただし、計算する地形量や処理方法、パラメーターが異なるため、同じDEMから作成しても同じ見え方にはなりません。

また、DEMの解像度が細かいほど、一般には小規模な地形を表現しやすくなりますが、ノイズや建物、樹木などの影響が含まれている場合もあります。判読目的に合ったDEMと作成条件を選ぶことが重要です。

地図で囲むだけ。DEM点群・CS立体図をブラウザで。

hoshitori GEO は、地図上で範囲を囲むだけで国土地理院の5m/10mメッシュ標高DEMを取得し、点群(LAS/XYZ)やCS立体図(位置情報つきPNG)をその場で作れるブラウザツールです。インストール不要。

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